2006年12月24日

忙しい日

クリスマスイブはここ十年くらい一年で一番忙しい日になることが多い。それは、友人・知人関係にパンを焼いて送らなければならないからだ。

パンを焼くようになって来年でちょうど25年になる。いろいろとあったが、ちょうど10年くらい前から「桃山麺麭倶楽部」という謎(?)の組織をでっちあげ、会員と称する知人に、定期的にパンを焼いて送ったりしていた。

一時は、都内在住会員向けに毎週パンを焼いて配達と称して、通勤途中の駅などで手渡しをしながら、月極会員と名付けた各地の方々に宅配便で発送していたのだ。

思えば、いったいどこからそんなエネルギーが沸いてきたのやら。

さすがに、体力も気力も衰えてしまい、会員の中に過労で他界された方が出たりしたこともあってか、ほとんど店をたたんだに近い状態になっている。

それでも、時々は思い出して希望者向けに送ったりしているのだが、特にクリスマスになると「あれが食べたい」という方も多いので、なるべくやりくりして送るようにしている。

あれとは、ドイツ菓子のシュトーレンを参考にアレンジしたもので、要するに漬け込みフルーツ(ドライフルーツのラム酒漬け)とクルミを使った素朴なパンである。私のポリシーとして、脂肪、卵、乳製品をいっさい加えないで作ることにしている。このため、アトピーやアレルギー体質の方でも比較的安心して口にすることができるらしい。

このことについては1つ忘れがたいできごとがある。

娘がまだ小学校低学年だった頃、親子参加の習い事で先生がケーキを焼いてくださりお茶会をすることになった。その時に、「例のあれ」を持参したのだが、多くの子供達はまず先生の焼いたシフォンケーキにかぶりついている。まあ、これは当然のことなのだが、一人空っぽのお皿を前に寂しげにしている少女がいた。どうやら、卵と乳製品のアレルギーをお持ちでケーキ類が食べられなかったらしい。

そこで、少女のご母堂に例のあれを差し出し、ようやくその少女のお皿の中に食べる物がのることになった。華やかなケーキとは異なり、素朴そのものなパンなのだが、その時の少女の安心しきった表情を、今になっても忘れることができぬ。

今年は、4名の方にシュトレン風(と呼んでいる)とゴマのパンを焼いておくることができた。

ところで、4組発送してしまうと、我が家の分が残らぬ計算になる。さすがに自分でも少しは口にしたかったので、いつもの半分の分量(*1)で作業をはじめた。ところが、おかしなものでいつもやっているのと量が違うため、勘が狂ったのか、水分量を多めにしてこねはじめてしまった。「あっ」と思ったときにはもう手遅れである。覆水盆にかえらぬではないけれど、一度入れてしまった水を戻すことは出来ない。それなら粉の方を増やしてやるかだが、生地の状態を見て、ふと思いつきそのまま発酵をさせてみることにした。

そして、発酵が終わった生地を型に流し込み、さらに二次発酵させて焼いてみた。すると、怪我の功名とはこのことで、一見パウンドケーキのようなパン菓子ができあがった。イタリアのパネトーネにちょっと似ている感じがする。食べてみるといい味になっている。おまけにこのパン菓子は卵もバターも使っていない点は変わっていない。

新しいレシピは、しばしばつまらぬ失敗から生まれるようだ。

(*1)

普段は小麦粉1Kgを基準にしているのだが、その半分のレシピでやろうとした。通常水は約560ccなので、その半分280cc目安でよかったのだが、どうやら計量の時に100cc余分に計っていたようだ。